前立腺は男性の膀胱の出口、尿道の始まりの部分を取り囲んでいるクルミ大の臓器で、精液の一部をつくっています。直腸と接しており、肛門から指で触診(直腸診)することもできます。
前立腺は中心領域、移行領域、辺縁領域の3つの部分に分けられます。構造はミカンに似ていて、中心領域と移行領域が実の部分、辺縁領域が皮の部分にあたります。
前立腺がんはもともと欧米に多く、日本は米国の10分の1程度の罹患率とされていました。しかし、近年では日本でも前立腺がんの罹患数が急増しています。
2006年の統計では、前立腺がんの罹患数が4万2千人で、全男性がんの中で4位でしたが、2020年には罹患数が肺がんに次いで2番目になると予想されています。
また、死亡数も同年には2000年の2.8倍に増加することが予想されています。簡便な検査で診断可能です。
自覚症状に乏しいので、是非一度症状がなくても検診されることをおすすめします。
症状
症状が初期にはあまりなく、検診で見つかることが多くなってきました。PSAという採血検査でチェック可能です。
確定診断の為にはその他の検査が必要になります。治療も多岐にわたっておりますので、ご自身で悩まずご相談ください。
前立腺がんの症状
- 自覚症状はほとんどないか、あっても排尿症状で前立腺肥大症が合併している事があります。
- 進行し、末期状態になるとリンパ節や骨に転移してしまいます。
- 治療は様々ありますので、医師と一緒に患者様に一番合った治療法を相談します。
- がんと言っても、早期発見にて完治もしくは安定する病気なので、あきらめてはいけません。
診療内容
- 診察の手順1
- 触診:肛門より前立腺を医師の指で触診します。良性の前立腺肥大症では全体に弾力性があり大きく振れますが、前立腺がんの場合石のように堅く触れる部分があるのが特徴的です。
- 診察の手順2
- PSA検査:ほとんどが前立腺(ごく一部に尿道)から分泌される物質です。PSA基準値は4.0で、前立腺癌の時に上昇する場合が多く、非常に有効な検査法です。
ただし、上昇したからといって、必ず癌というわけではありません。肥大症や、炎症によっても上昇する場合がありますので、精密検査が必要となります。
また、基準値の4.0以下だからといって、がんがないともいえません。あくまでも目安と考えていただいたほうがよいと思います。年齢が低いほどPSAは低い傾向があります。
- 診察の手順3
- 経直腸的前立腺超音波:前立腺は体の深いところにあるので、専用のプローベ(探触子)を用いて前立腺を描出させる、専用の検査をおこないます。
前立腺癌は超音波では異常な陰がないかどうかを検索します。もちろん前立腺のその他の部位や、精嚢も観察し、肥大症や炎症の鑑別をおこないます。
前立腺の体積も計測することができます。癌の場合は、前立腺内にとどまったもの(限局性)か、周囲へ広がっているものか(浸潤性)の判断にも用います。
- 診察の手順4
- 前立腺針生検:上記の検査のみでは前立腺がんはあくまで疑いであり、確定診断は不可能です。
確定診断のためには、前立腺の組織の一部を針で回収し、顕微鏡で確認する検査が必要になります。
当院では日帰りの検査が可能です。肛門周囲が痛まないように麻酔をかけて行います。
合併症としては肛門出血、血尿、細菌感染がありますが、ほとんどの方はすぐ改善します。それらの合併症の予防のため抗生剤を投与します。
- 診察の手順5
- 前立腺がんと診断された方には手術、放射線、ホルモン治療の選択肢があります。
手術と放射線に関しては連携先の病院に紹介し治療を行ってもらいます。
ホルモン療法を選択された患者さんは当院でも治療可能です。またセカンドオピニオンも気軽にご相談ください。